トップ > 新規事業計画書の作り方 > イグジット(出口)戦略

イグジット(出口)戦略

イグジット(出口)とは、金融業界で主に用いられる言葉で、創業者やファンドなどの投資家が、投資した資金を回収することを意味します。
また、別の言い方としてはハーベスティング(収穫)という言い方もあり、意味合い的にはこちらの方がしっくりくるかもしれません。

イグジットの具体的な方法としては投資先の株式を公開(IPO)して、上場株として市場で売却する方法と、他の企業に投資先全体を売却する企業の合併・買収(M&A)による方法などがあります。


[新規事業企画時におけるEXIT戦略の意義]

Q1:その事業に対して、創業者、そして株主が何を求めるのか?
Q2:あるいはその事業そのものをどのようにしていきたいと思っているのか?

これらへの答え次第では、新規事業を企画する時、もしくは事業が無事に最初の立ち上がり期を超えた時にEXIT戦略を考えておくことが殆ど意味を持たないこともあります。

議論を非常に単純化すると、仮に、株を100%保有している創業者が会社をそこまで大きくしたいと思っておらず、自分がやりたい事業を自分がやりたい範囲で続けたいと考えている場合は、イグジットとは自分の会社に他者の資本を入れる、つまり経営権を100%は保持できなくなるということですから、イグジットという行為自体が創業者のやりたいことに反します。


しかしこのようなケース以外は、基本的にイグジット戦略を考えておく方が有利であるといえます。
(正確には、創業者のEXITに対する目的や、その時々の場合によって様々なケースが存在します。)

例えば、当初、株を100%保有している創業者が経営権に対するこだわりよりも、その事業の成長を第一優先事項としてとらえていたとします。
この場合、自社と近しい分野で伸びそうな事業を行っている企業を吸収し、事業領域を広げていこうと考える、
いわゆるストラテジックバイヤーといわれる企業にM&Aを持ちかけることを前提に、その領域で新規事業を開発するということが考えられます。

なぜならば、ストラテジックバイヤーと資本関係を結ぶことによって、その事業が活用できる経営資源に圧倒的な広がりが生まれ、その結果として事業の成長スピードが急速に加速することが考えられるからです。

ストラテジックバイヤーの具体的な例を挙げると、

インターネットサービス領域:Google、Yahoo!

システム領域:シスコシステムズ

製薬領域:ファイザー など

このパターンもあくまで一例ですが、ポイントとしてはイグジット戦略(他者の資本を入れる行為)を選択肢の一つとして見据えておくことで、事業の可能性の幅を広げることができます。
また事前に想定しておくことで、売却時の価額を増加させたり、資本政策に関する問題に対処しやすくなるなどもメリットもあります。


[EXIT戦略にもマーケティング戦略が必要]

ここでは、イグジット手段がIPOの場合を想定して解説します。
イグジット戦略をどう考えるかというのは、マーケティング戦略を考えるのと非常に良く似ています。
いわゆるマーケティングの4Pに、イグジットの要件を照らし合わせると、

・商品(Product)=事業会社
・価格(Price)=株式価値
・チャネル(Channel)=証券取引所
・プロモーション(Promotion)=IR

と置き換えることができます。

まず商品戦略について考えます。
通常のマーケティング戦略と同様に、チャネル(=証券取引所)の先にある顧客(=投資家)のニーズがある商品(=事業会社)をつくるべきであることは言うまでもありません。
投資家のニーズは、一元的には投資した株式価値の将来の上昇ですから、株式市場で評価が高い事業に仕立てることが重要です。

株式市場の新規上場銘柄を見ていると、評価される事業には傾向として大きく2つのポイントがあるように思います。

一つは社会的なトレンドをおさえていること。

もう一つは事業の急速な伸びを期待させるビジネスモデルであること、です。

例えば、今は少子・高齢化、環境関連などがトレンドとして挙げられます。
これに、売上と利益率の伸長が比較的短期に期待できるIT要素が組み合わさった事業などは高い評価が期待できるといえるでしょう。

顧客ニーズに応える戦略的商品として、このポイントをおさえて新規事業を企画する。
もしくはすでに立ち上がっている事業であれば、このポイントを事業のパーツとして組み込んでいくことにより、市場において価値の高い商品(=事業会社)を開発することが可能だと思います。


次に価格戦略について考えます。
まず、事業会社が売買される株式市場というマーケットの特性とはどのようなものでしょうか。

実は、株式市場における価格決定プロセスは、一般消費財(例えば、菓子や洗剤など)の価格決定プロセスとは大きく異なります。

要点としては、一般消費財の価格決定プロセスが、商品提供者側の論理によって決定されるものである(プロダクトアウト的)のに対して、株式市場においては商品(事業)提供者側の論理ではなく、市場が価格を決め、その結果により提供者側が確保できる付加価値が決定されます(マーケットアウト的)。

株式市場においては顧客(=投資家)がつける株価の総意が価格を決めるということです。

これを数式として表すと以下のようになります。

一般消費財の場合:
原価(商品を作るために要した費用)+企業が確保したい利益=価格

株式市場の場合:
価格(株式市場の評価)−原価(事業をつくるために要した費用)=付加価値

どうですか?

一般消費財の価格決定プロセスには、提供者側の意志が入ってきますから「顧客がたくさん買ってくれて、かつ利益が確保できる。

そんな価格はいくらになるだろう?」とマーケティング担当者が悩むわけですが、それに対して株式市場は、ある意味非常にシンプルで
「できるだけいい商品を、できるだけ安い原価で作ってその分儲ける」
ということです。

したがって、新規事業を開発する方や、IPOを狙って事業を立ち上げる方は、

・いい商品(事業会社)とはなんなのか?
・その商品(事業会社)をできるだけ安い原価で作るためにはどうすれば良いのか?

ということにとにかく頭を働かせる、

その苦労が結果として青天井の付加価値として返ってくるわけです。

ただし、株価はDCF法などで算出される合理的な経済価値も根拠となりえますが、それ以外にも経済情勢を始めとした株式市況がそれにも増して多大な影響をもたらします。
つまり、株式市場において付加価値を最大化させるには、事業会社が生む出す利益を増大させるとともに、イグジットを行うタイミングの株式市場の動向を良く捉えておく必要があります。


次にチャネル(=証券取引所)をどこにするかということでは、一つは新興企業が入りやすい取引所ということで、例えば東証マザーズやジャスダックといったどのマーケットを選ぶというのが妥当なところであり、そこはあまり気を使う必要はありません。

しかし、どういった業種として登録するかということが実は非常に重要です。

株式市場においては、利益に対する株価(PER)の比率が業種内では近似し、また、業種間ではかなり差があります。

従って、業種別の動向も捉え、IPO時に最適な業種に登録することが重要となります。


次に、プロモーション(=IR)についてですが、有望な顧客(=投資家)に対して、
直接的に、若しくは、アナリストなどを経て間接的に、事業会社に投資したいと思えるような魅力をしっかり伝え、理解してもらわなければなりません。

その為には、事業のコンセプト・意義、自社の強み・他社との差別化ポイント、収益性、将来の成長性といった事業会社の要点を、客観的に分かりやすく伝えることが重要です。

そうすることで、かつてのITバブルの頃の短期的な株価上昇を狙うような粗悪な投機商品ではなく、商品=事業会社の品質が、永続的に担保されている安心して投資できる商品であることを理解して頂くことができ、より多くの投資家からの投資が期待できます。


IPOというものを俯瞰した場合、そこで評価される事業会社は、結局のところ、少子・高齢化や地球環境保護といった世の中のトレンドに起因する消費者ニーズに応えている事業会社だということです。

つまり、イグジット戦略の根幹は、事業会社の顧客である投資家からその先にある事業会社、更に先にある顧客を起点に全てを発想する、マーケットアウトという考え方に収斂されると言えます。

事例)本サイトの運営者である(株)エムアウトの第一号イグジット案件

2008年12月10日、エムアウトはその100%子会社であった民間学童保育事業を行う株式会社キッズベースキャンプ(以下、KBC)を東京急行電鉄株式会社(以下、東急)へ売却しました。

本件で、イグジット戦略を紐解くと、東急では、少子・高齢化というトレンドを捉えた、「子育て世帯の沿線への流入」を図る戦略の一貫として、学童保育事業への進出が検討されていました。
また、エムアウトでは、KBCのビジネスモデルの確立や収益性の確認をもって、エムアウトの事業領域である起業プロセスが完了したことにともない、イグジットの具体化を進めていた経緯がありました。

そうした経緯の中、東急は、KBCが主に東急沿線に出店していたため、自社で起業を行う必要がなく、その為に費やすであろう時間やヒト・モノ・カネをミニマイズできること、一方、KBCは、東急の様々な既存インフラや資源の活用、プロモーションの効率化などにより、事業成長スピードを飛躍的に高めることができることが予想され、KBCを東急に引き継ぐことが、イグジット戦略として最適だと判断しました。


エムアウトでは、事業の性格により、事業会社の成長戦略において最適なイグジット方法を選択していく方針で、本件のようにM&Aによる互いのシナジー効果が大いに期待できる場合は、イグジット方法として、IPOではなくM&Aを選択することになります。

参考)本サイトの運営者である(株)エムアウトのビジネスモデルエムアウトは、「起業」と「事業の継続的成長」には独自のノウハウが必要と考えています。
「起業」に特化したエムアウトは、事業開発、事業化推進、事業参入という3つのフェーズにて「起業」のプロセスを終えた後は、その事業を継続的に発展させるノウハウを持つ最適なパートナーに、速やかに事業を引継がなければなりません。
その時に、これまでその事業に投資した資金を回収する=イグジットを行うことがビジネスモデル上の要点であり、そうして漸くエムアウトの商売サイクルが回ることとなります。

従って、エムアウトでは、常にイグジット戦略について考えておくことが非常に重要だということです。


kikaku_nakajima.jpg

事業企画グループ
中島宏史


新規事業計画書の作り方一覧